
長い時間をかけて、現世と幽世の境に立ちながら、数え切れないほどの魂の彷徨を見届けてきた者として、ひとつ確かなことがある。この世には、人間の知性が届かない深遠な叡智が、あちこちに息を潜めているということだ。そのなかでも「タロット」は、特別な存在感を放っている。それは単なる未来を占う道具ではない。七十八枚の絵札のなかに宇宙の縮図を凝縮し、私たちの魂の旅路をそっと映し出す、叡智の鏡なのだ。言葉を持たない書物とも呼べるこの札は、理性の壁をすり抜けて、見る者の深層心理に直接語りかけてくる。
この文章が目指すのは、あなたをそのタロットの世界へ招き入れることだ。タロットがイタリアの宮廷で生まれた遊戯の札から、いかにして神秘主義の鍵へと変貌を遂げたのか——その歴史の流れを一緒に遡り、七十八枚が織りなす精緻な構造を解き明かし、秘められた象徴を読み解いていく。読み終えるころには、これらの紙片がなぜ、自己と宇宙への深い理解を開く扉になりうるのか、きっと感じ取れているはずだ。
タロットの真の姿に迫るには、まずその来歴を紐解かなければならない。現代では神秘的なオーラを纏うこのカードが、もともとは占術とは無縁の、貴族たちの遊び道具だったという事実は、多くの人を驚かせるだろう。そして、そこからどのように「秘儀の書」へと変容していったのかを知ると、タロットの魅力はいっそう深みを増す。
タロットカードが歴史の表舞台に初めて姿を現すのは、15世紀ルネサンス期の北イタリアだ。現存する最古の記録は、1442年のフェラーラ領主エステ家の帳簿に残された「トリオンフィのカードパックを購入」という一文である。この「トリオンフィ」こそ、タロットカードの原初の姿にほかならない。
トリオンフィはラテン語で「凱旋」を意味し、当時すでに存在していた四つのスートからなるトランプカードに、「切り札」として寓意画が描かれた第五のスートを加えたものだった。その目的は、今日のような占術ではなく、トリック・テイキングと呼ばれるカードゲームに興じることにあった。現代私たちが慣れ親しむ「トランプ」も、タロットも、もとは同じひとつの流れから枝分かれした兄弟だといえる。さらに遡れば、そのルーツはイスラム文化圏を経由し、はるか東方の中国にまで辿り着くのだから、タロットは東西文明が製紙・印刷技術の発達とともに交差した産物でもあるのだ。
これらのカードに描かれた寓意画の源泉として有力視されているのが、14世紀の詩人ペトラルカが著した寓意詩『トリオンフィ』だ。「愛」が「純潔」に、「純潔」が「死」に、「死」が「名声」に打ち勝っていくという凱旋行列を描いたこの詩の挿絵——天使、骸骨、塔といった図像——が、初期のタロットの絵柄に多大な影響を与えたとされている。現存する最古のタロットデッキ「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」などは、ミラノ公爵家が婚礼の記念品として宮廷画家に描かせた一点ものの芸術作品であり、神秘的な意図はまったく込められていなかった。
当初は貴族階級の独占物だったタロットが広くヨーロッパへ広がるきっかけとなったのは、16世紀以降の印刷技術の発達だ。木版画による大量生産が可能になると、タロットはイタリアからフランス、スイスへと伝播していった。その過程で数あるバリエーションのなかから標準的なデザインが定まっていき、後に「マルセイユ版タロット」として知られることになるデッキの原型が生まれる。
マルセイユ版の特徴は、素朴で力強い木版画の線と、赤・青・黄・白といったシンプルな色使いにある。そして見逃せない点がひとつある。大アルカナと呼ばれる二十二枚の寓意画カード以外、小アルカナの数札にはトランプのようにスートのシンボルが数だけ並ぶだけで、具体的な情景は描かれていなかった——「ピップカード」と呼ばれるこのスタイルだ。マルセイユ版の登場でタロットの構成は標準化され、遊戯の道具として、時には賭博の対象として、庶民の間にも広まっていった。
タロットが遊戯の道具から占術の秘法へと劇的に生まれ変わるのは、18世紀後半のフランスにおいてだ。革命前夜のパリは、古代エジプト文明への憧憬、いわゆる「エジプト・ブーム」に沸き立っており、あらゆるものに古代の叡智を見出そうとする空気が漂っていた。この知的熱狂こそが、タロットの運命を永遠に変えることになる。
1781年、フランスの学者アントワーヌ・クール・ド・ジェブランは、タロットカードこそ古代エジプトの神官たちが遺した「トートの書」の叡智を秘めた、失われた書物であるという説を著作のなかで提唱した。歴史的根拠には乏しかったものの、この説はロマン溢れる解釈として当時の知識人たちに熱狂的に受け入れられ、タロットは単なるカードゲームから解読されるべき古代の秘儀へと様変わりしたのである。
この新思想を実践に移したのが、ジャン=バティスト・アリエット——通称「エテイヤ」だ。史上初めて職業占い師としてタロットを用いた彼は、ジェブランの説をもとに独自の解釈体系を構築し、占術専用のデッキをデザインした。ここに現代へと続くタロット占いの歴史が幕を開ける。
19世紀に入ると、フランスの魔術師エリファス・レヴィがタロットをさらに高次の神秘哲学へと昇華させる。大アルカナの二十二枚のカードを、ユダヤ教の神秘思想カバラの「生命の樹」の二十二の径と、ヘブライ文字二十二文字に体系的に対応させたのだ。これによりタロットは、単なる吉凶判断の道具から「宇宙の法則と人間の霊的進化を解き明かす鍵」と見なされるようになっていった。
エリファス・レヴィが築いた秘教的タロット観は、19世紀末のイギリスでその頂点を迎える。オカルトへの関心が高まるなか設立された魔術結社「ヘルメス主義黄金の夜明け団」は、カバラ思想を基盤としながら占星術・錬金術・数秘術といった西洋神秘主義のあらゆる知を統合し、タロットをその象徴体系の中心に据えた。大アルカナの各カードに特定の惑星や黄道十二宮が割り当てられ、小アルカナの一枚一枚に至るまで詳細な象徴的意味が与えられていった。
この黄金の夜明け団の叡智を結集し、タロット史上最大の革命を引き起こしたのが、団のメンバーだったアーサー・エドワード・ウェイトが構想し、芸術家パメラ・コールマン・スミスが描いた、1909年刊行の「ウェイト版タロット(ライダー・ウェイト版/ウェイト・スミス版)」だ。
このデッキの真に革命的な点は、マルセイユ版では単なる記号の羅列だった小アルカナの数札すべてに、具体的な物語性を持つ情景が描かれたことにある。マルセイユ版の「剣の8」が八本の剣の記号を並べるだけだったのに対し、ウェイト版では目隠しをされ縛られた女性が八本の剣に囲まれている場面が描かれている。これにより、カードの意味は記憶に頼るものではなく、絵柄から直感的・心理的に読み解けるものへと変わった。
なお、長年にわたりウェイトの名前のみが前面に出てきたが、実際に七十八枚すべての絵を描き上げたパメラ・コールマン・スミスの貢献は計り知れない。彼女はウェイトの指示のもと、当時の舞台芸術や象徴主義絵画の影響を受けながら、タロットを「読める」ものへと変えた真の功労者だ。近年では彼女の名を冠した「ウェイト・スミス版」という呼称も広まっており、ようやくその功績が正当に評価されつつある。
ウェイトはまた、黄金の夜明け団の占星術的対応にもとづき、マルセイユ版では八番だった「正義」と十一番だった「力」の番号を入れ替え、「力」を獅子座に対応する八番、「正義」を天秤座に対応する十一番へと変更した。このウェイト版タロットの登場こそが、20世紀以降のタロットの爆発的な普及を決定づけた。
美術史・図像学・思想史・心理学・文学といったさまざまな学問的視点からタロットへの本格的な研究が生まれ始めたのも、まさにこの時代以降のことだ。分析哲学の泰斗マイケル・ダメットらによる学術的考察をはじめ、20世紀後半からは世界中の研究者がその歴史と象徴体系を探求するようになっていった。
| 特徴 | マルセイユ版タロット (17世紀頃) | ウェイト=スミス版タロット (1909年) |
|---|---|---|
| 起源・目的 | 主にカードゲーム用。後に占術に転用。 | 当初から占術と秘教的研究のために設計。 |
| アートスタイル | 木版画。シンプルな線と限られた原色。 | パメラ・C・スミスによる詳細なイラスト。豊かな象徴性。 |
| 大アルカナの番号 | 8番:正義、11番:力 | 8番:力、11番:正義 |
| 小アルカナ(数札) | 絵のない「ピップカード」。スートの記号のみ。 | 全てのカードに物語性のある情景が描かれている。 |
| リーディングスタイル | 数秘術やスートの意味の記憶に大きく依存する。 | 絵柄からの直感的、象徴的、心理的な解釈を促す。 |
| 哲学的背景 | オカルト以前。後に秘教的意味が後付けされた。 | 黄金の夜明け団のカバラ、占星術、魔術の統合体系。 |
タロットデッキは、でたらめに絵が描かれた札の集まりではない。七十八枚のカードが構成する、驚くほど精緻で哲学的なシステムなのだ。この構造を理解することが、タロットという言語を読み解く第一歩になる。デッキは大きく「大アルカナ」と「小アルカナ」に分かれており、それぞれが異なる次元の真理を映し出している。
タロットの核心をなすのが「大アルカナ(Major Arcana)」と呼ばれる二十二枚のカードだ。アルカナはラテン語で「秘密」を意味し、大アルカナは文字通り「大いなる秘密」を指す。人生の根源的なテーマ、普遍的な元型(アーキタイプ)、霊的な学び、そして私たちの意志を超えた宿命の力——これらを象徴しているのが大アルカナだ。リーディングにこれらが現れた時、それは相談者が人生の重要な転換点にいること、あるいは深遠な霊的教訓に直面していることを告げている。
一方、「小アルカナ(Minor Arcana)」と呼ばれる五十六枚のカードは「小さき秘密」を担う。日々経験する具体的な出来事、感情の機微、思考の働き、現実的な行動——人生という織物の「糸」そのものを表しているのが小アルカナだ。大アルカナが「なぜその学びが必要なのか」という霊的な理由を示すとすれば、小アルカナは「どのように」「何を通じて」その学びが経験されるのかを教えてくれる。この二つが重なりあうことで、タロットリーディングは霊的な深みと現実的な具体性を兼ね備えた、多層的な診断ツールとして機能するのだ。
五十六枚の小アルカナは、さらに四つの「スート(suit)」に分けられる。西洋神秘主義の根幹をなす四大元素(火・水・風・地)と密接に結びついたこれらのスートは、それぞれが人間の経験の異なる側面を司っている。
棒(Wands)は元素の「火」に対応する。情熱、創造性、野心、意志の力、行動のエネルギー——物事の始まりの閃きや、目標へ向かう純粋な意欲の世界だ。
聖杯(Cups)は元素の「水」に対応する。愛情、人間関係、直感、夢、無意識の領域——心と心の繋がりや、内面的な充足感の世界である。
剣(Swords)は元素の「風」に対応する。知性、論理、コミュニケーション、そして葛藤や困難——真実を追い求める鋭い思考や、時に痛みを伴う決断の世界だ。
金貨(Pentacles)は元素の「地」に対応する。物質世界、仕事、財産、健康、具体的な成果——五感を通じて経験する、形ある世界そのものを象徴している。
各スートは、エース(1)から10までの十枚の「数札(Number Cards)」と、四枚の「宮廷札(Court Cards)」で構成されている。
数札は、それぞれのスートが象徴する元素のエネルギーが、生まれ、発展し、完成に至るサイクルを描き出している。エースは純粋な可能性の種子であり、新たな始まりの象徴だ。2から9にかけては、その可能性が現実の場で展開する過程での葛藤・成長・転機が刻まれ、10のカードはそのサイクルの完成と、同時に次のエースへと繋がる新たな可能性を内包している。ウェイト版がすべての数札を絵札化したことで、四十の数札は人生の断片を描いた四十の「短編物語」として、私たちの前に立ち現れるようになった。
宮廷札(ペイジ、ナイト、クイーン、キング)は、スートの元素を体現する人物像、あるいは私たち自身の人格の異なる側面を映し出す。特定の人物を指すこともあれば、相談者自身が持つべき資質や、状況における役割を示すこともある。
ペイジ(Page)は若々しい探求者であり、学び手であり、新たな知らせをもたらす使者だ。その元素のエネルギーを学び始めた段階を表す。
ナイト(Knight)は情熱的な行動者で、その元素のエネルギーを特定の目的へ向けて、時に猪突猛進に追い求める姿を体現する。
クイーン(Queen)はその元素の内面的な側面を完全にマスターした存在だ。受容的で、育む力を持ち、成熟した智慧を象徴している。
キング(King)はその元素の外面的な側面を体現する。権威、統率力、社会的な責任を担う存在として描かれる。
こうして見ると、タロットの七十八枚は、大いなる宇宙の法則から日々の些細な出来事まで、人間の経験のあらゆる側面を網羅する、完璧な象徴の地図であることがわかる。
タロットの叡智の頂点に立つ大アルカナは、二十二枚の独立したカードの集まりではない。0番の「愚者」から始まり21番の「世界」で終わる、ひとつの壮大な物語を描いているのだ。「愚者の旅(The Fool's Journey)」として知られるこの物語は、私たちひとりひとりの魂がこの世に生を受け、数多の経験を経て成長し、自己を完成させていく普遍的なプロセスの象徴だ。心理学者カール・ユングが提唱した「個性化の過程(Individuation)」——意識と無意識を統合し、真の自己を実現する道筋——とこれが驚くほど符合していることは、決して偶然とは思えない。
旅は0番の「愚者」から始まる。経験も知識も持たず、ただ無限の可能性だけを携えて崖っぷちに立つ彼は、純粋無垢な魂の象徴だ。未知の旅への期待に胸を膨らませ、恐れることなく一歩を踏み出す——この「愚者」こそ、私たち自身の姿にほかならない。
旅の途上、愚者は残る二十一の元型(アーキタイプ)と出会う。師であり、試練であり、人生の重要な局面そのものである彼らとの出会いが、魂を磨いていく。
「I. 魔術師」は、愚者に自らの意志と創造の力を教える。天のエネルギーを地に降ろし、無から有を生み出す術を知る彼との出会いで、愚者は自分が現実を創造できる力を持つことを学ぶ。「II. 女教皇」は、目に見える世界の背後に潜む真実——直感と無意識の叡智を守る番人だ。ここで愚者は、外面的な知識だけでなく、内なる声に耳を傾けることの大切さを知る。
「III. 女帝」と「IV. 皇帝」は、愚者が最初に出会う偉大なる父母の元型だ。生命を育む母なる自然の豊かさを象徴する女帝と、社会に秩序と安定をもたらす父性の権威を象徴する皇帝——この両親から愚者は、世界の基本的な仕組みとその中で生きる術を学んでいく。
旅を進めるなかで愚者は「V. 法王」から伝統と社会規範を学び、「VI. 恋人たち」で初めて重大な「選択」と他者との深い結びつきを経験し、「VII. 戦車」で自らのエゴと意志の力を確立し、対立する力を乗り越えて目標を達成することを学ぶ。社会的な自己、いわゆる「ペルソナ」が形成されていく段階だ。
しかし、真の成長は旅が内面へと向かうときに始まる。「VIII. 力」は、野性的な本能(獅子)を腕力ではなく愛と忍耐によって手なずけることを教えてくれる。「IX. 隠者」は、社会の喧騒から離れ、孤独のなかで自らの内なる光を探求する智慧を示す。そして「X. 運命の輪」との出会いにより、愚者は人生には自らの意志でコントロールできない、大きな運命の流れが存在することを悟る。
旅はさらに深層へと進む。「XI. 正義」は、自らの行いの結果に対する責任と、原因と結果の法則(カルマ)を直視させる。「XII. 吊るされた男」は、自己を犠牲にし、世界を逆さまに見ることで新たな視点と悟りを得るという深遠な教えを体現する。そして「XIII. 死神」は古い自己の終わりと避けられない変容を告げる——これは肉体的な死ではなく、より真実の自己へと生まれ変わるための、エゴの死だ。
変容の過程で、愚者は自らの最も暗い部分と向き合わなければならない。「XV. 悪魔」は、私たちが抑圧し目を背けてきた欲望・執着・恐怖、つまりユングの言う「影(シャドウ)」の元型だ。この影を認め、統合しない限り魂は先へ進めない。「XVI. 塔」は、その偽りの自己や誤った信念が神の雷によって打ち砕かれる劇的な瞬間を描く。痛みを伴うが、魂を偽りの牢獄から解放するための、必然的な崩壊なのだ。
塔の崩壊という浄化を経た後、愚者の魂は天上の領域へと昇っていく。「XVII. 星」は暗闇のなかに輝く希望と霊的な導きを与え、「XVIII. 月」は無意識の最も深い部分に潜む最後の幻想や不安と対峙させる。そして「XIX. 太陽」のもとで愚者は再生し、生命力と曇りのない意識——真の自己の輝きを取り戻す。
最終段階において「XX. 審判」は、過去のすべてが赦され魂が新たな次元へと呼び覚まされる復活の時を告げる。そしてついに「XXI. 世界」で、愚者の旅は完成する。男性性と女性性、意識と無意識、天と地——すべてを統合し、宇宙と一体となった完全な存在となった愚者は、もはや愚者ではない。自己実現を達成し、より高次の螺旋を描く新たな旅を始める準備のできた賢者なのだ。
この「愚者の旅」が雄弁に語るのは、タロットが単なる占いの道具ではなく、人間の霊的成長の青写真だということだ。私たちが人生のどの段階にいるのかを照らし出し、次の一歩を静かに示してくれる——深遠な智慧の体系として、タロットはここに息づいている。
タロットの象徴体系を理解したなら、次はその叡智を実生活に引き出すための実践へと進もう。タロットリーディングは、単にカードをめくる作業ではない。日常の雑念から意識を切り離し、深層心理と宇宙の流れに接続するための、神聖な儀式だ。その核心は「偶然性」を神聖化することにある。
儀式の第一歩は、問いを立てることから始まる。タロットは明確な問いに対して最も鮮明な答えを返してくれる。「私は幸せになれますか?」という問いよりも、「私が真の幸福を見出すために、今理解すべきことは何ですか?」といった、自己の内省を促す開かれた問いの方がずっと深いメッセージを引き出せる。問いを立てること自体が、自らの意識の焦点を定め、宇宙に意図を発信する神聖なプロセスなのだ。
問いが定まったらカードを手に取り、シャッフルとカットを行う。これはカードの物理的な順序をランダム化すると同時に、問い手のエネルギーと思念をカードに注ぎ込む行為だ。
シャッフルはカードを裏向きにしたまま両手でよくかき混ぜる。この間、心の中で絶えず問いを唱え続ける。問い手の潜在意識が、カードの「偶然」の配列に影響を与えるとされる。いつシャッフルを終えるべきかに決まった答えはない——「もう十分だ」と直感が告げる瞬間が、まさにその時だ。
カットはシャッフルを終えたカードを一つの山にまとめ、左手(古来より直感を司るとされる)で三つの小さな山に分ける。そして直感に従い、分ける前とは異なる順番で再び一つの山に戻す。最終的なカードの配列を、個人の意志を超えた「運命」に委ねるための、最後の儀式的な行為だ。
この一連のプロセスは、合理的な精神を静め、予測不可能な「偶然」を通して、より高次の意識や潜在意識からのメッセージを受け取る準備を整えるために欠かせない。
シャッフルとカットを終えたデッキからカードを一枚ずつ引き、あらかじめ定められた配置図(スプレッド)に従って並べていく。スプレッドは、引かれたカードの意味を特定の文脈のなかに位置づけるための枠組みで、各配置場所には「過去」「現在」「未来」「障害」といった固有の意味が割り当てられている。これにより、カードの象徴が具体的なメッセージへと翻訳されるのだ。
ワンオラクルは一枚だけカードを引く、最もシンプルなスプレッドだ。その日の指針や、特定の問いへの核心的なメッセージを得るのに向いている。
スリーカードは三枚のカードを左から「過去」「現在」「未来」として並べる。物事の時間の流れや状況の変遷を簡潔に把握するのに非常に有効だ。
ケルト十字スプレッドは十枚のカードを用いる、最も伝統的で包括的なスプレッドのひとつだ。問題の核心から潜在意識、未来の可能性、最終的な結果まで多角的に掘り下げることができる。プロの占い師が最も信頼を置くスプレッドであり、その構造を理解することはタロットの解釈能力を飛躍的に高めてくれる。
| 配置 | 名称 | 意味と問いかける内容 |
|---|---|---|
| 1 | 問題の核心 | 「これは状況の中心、相談者の現在の状態を表す。」 |
| 2 | 障害・対立要因 | 「これが現在の課題や障害。何があなたを妨げているか?」(1のカードの上に水平に置く) |
| 3 | 根本原因 | 「これは深層の過去、状況の根本的な原因を表す。」(中央の十字の下) |
| 4 | 過去の状況 | 「これは過ぎ去りつつあるエネルギー、直近の過去を表す。」(中央の十字の左) |
| 5 | 顕在意識・目標 | 「これは達成可能な最良の結果、あるいは相談者の意識的な目標を表す。」(中央の十字の上) |
| 6 | 近い未来 | 「これは訪れつつあるエネルギー、次の一歩を表す。」(中央の十字の右) |
| 7 | 相談者の立場 | 「これはあなた自身の視点、状況への現在のアプローチを表す。」(縦に並んだカードの一番下) |
| 8 | 周囲の状況 | 「これは環境、他者、そしてあなたに影響を与える外部のエネルギーを示す。」(縦に並んだカードの下から二番目) |
| 9 | 希望と恐れ | 「これは結果に対するあなたの隠された希望や、根深い恐れを明らかにする。」(縦に並んだカードの下から三番目) |
| 10 | 最終結果 | 「これは他の全てのカードの集大成であり、現在の道を進んだ場合の最も可能性の高い結末。」(縦に並んだカードの一番上) |
カードを並べた際、上下逆さまに出るカードがある。これを「逆位置(Reversed)」と呼ぶ。初心者はこれを単に「悪い意味」と捉えがちだが、それは少し短絡的だ。逆位置は、そのカードが持つ元型的なエネルギーが「ブロックされている」「過剰に働いている」「不足している」あるいは「内面化されている」状態を示す、極めて重要な診断情報なのである。
例えば「戦車」のカードは意志の力とコントロールを象徴する。正位置で出れば、目標に向かって力強く前進している状態だ。しかし逆位置の場合、「方向性を見失っている(エネルギーの不足)」かもしれないし、「無謀に暴走している(エネルギーの過剰)」かもしれない。あるいは「内なる葛藤によって身動きが取れなくなっている(エネルギーのブロック)」可能性もある。逆位置を多角的に読むことで、リーディングはより深く、建設的なアドバイスを与えることができる。逆位置は凶兆ではなく、エネルギーのバランスを取り戻すための調整点を指し示してくれる、貴重な指標なのだ。
タロット占術とは、未来を決定づける予言ではない。現在地を照らし出し、より良い未来を創造するための選択肢を提示する、魂との対話だ。その儀式を通じて私たちは、日常の意識を超えた場所から自らの人生を俯瞰する視点を得る——それこそが、七十八枚の絵札が何百年にもわたって人々を魅了し続けてきた理由なのかもしれない。
専修大学 - オカルト的タロットの黎明(1):https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/record/1...
専修大学 - オカルト的タロットの黎明(2):https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/record/1...
静岡大学学術リポジトリ - タロットカードにおけるアダプテーション:https://shizuoka.repo.nii.ac.jp/record/1...
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國學院大學学術情報リポジトリ - オカルト番組をめぐるメディア言説:https://k-rain.repo.nii.ac.jp/record/245...
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