真霊論-金縛り

金縛り

夜中、ふと目が覚めたとき——体が一切動かない。声も出ない。意識ははっきりしているのに、まるで何かに押さえつけられているようだ。誰もが一度は耳にしたことがある「金縛り」は、そんなぞっとするような体験として語り継がれてきた現象だ。

金縛りとは、身体が硬直して意識があるにもかかわらず身動きの取れなくなる現象のこと。誰かが自分の上に乗っているように感じたり、部屋の中に見知らぬ第三者の気配を察したり、何者かに触れられているような感覚を伴うことも珍しくない。

そのメカニズムについては、科学的に説明できる部分もあれば、いまだ解明されていない側面も残されている。だからこそ、現代においても「心霊現象の一種」として語られることが多いのだろう。なお、プロセスや感覚の面では幽体離脱との共通点も多く、幽体離脱体験の一部は金縛り中に見た幻覚の作用だと考える研究者もいる。

「金縛り」という言葉のルーツ

「金縛り」という言葉は、もともと仏教——それも密教の世界に由来する。語源は「金縛法(きんばくほう)」という修法だ。

五大明王の中心に位置し、大日如来の化身とも称される不動明王が得意としたとされる術で、これにかかると相手は完全に身動きを封じられてしまう。あまりにも強力で、まるで黄金の鎖に縛り上げられたかのような状態になることから「金縛法」と呼ばれていた。

眠っている間に身動きが取れなくなるこの現象が、その術と酷似しているとして、現在のような意味で「金縛り」という言葉が使われるようになったのである。

面白いことに、この現象は日本だけのものではない。ラオスでは「ピー・ウム」、ベトナムでは「マ・デ」、中国では「鬼壓身」、ニューギニアでは「スク・ニンミヨ」、トルコでは「カラバサン」、ジンバブエでは「マッジキリラ」——世界各地に固有の名前が存在しているのだ。いずれの文化圏においても、魔女や悪魔といった超自然的な存在によって引き起こされると信じられていることも、不思議な一致である。これほど普遍的な体験であることが、この現象の謎をいっそう深くしている。

医学的見地からみた金縛り

大半のケースでは、金縛りは睡眠中に発生する。医学的には「睡眠麻痺」と呼ばれ、睡眠障害の一種として分類されている。

睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類がある。ノンレム睡眠が体も脳もしっかり休む眠りであるのに対し、レム睡眠は脳が活発に動き続ける夢を見やすい眠りだ。このレム睡眠中、脳は目覚めているのに体の筋肉は完全に弛緩した状態になる——これは夢の内容に反応して体が動き出さないよう、脳が意図的に体を麻痺させているためだと考えられている。

金縛りは、この仕組みが「ズレて」しまったときに起こる。脳だけが目覚めてしまい、体の麻痺はまだ解けていない——そのわずかな乖離の瞬間が、あの身動きの取れない感覚を生み出すのだ。

睡眠専門医の調査によれば、成人の約30〜50%が人生で一度は金縛りを経験したことがあるとされ、特に10〜20代の若い世代に多く見られる。規則正しい生活ができていない時期、あるいは強いストレスや過労が重なったとき——そんなタイミングで起きやすいのも、レム睡眠のリズムが乱れやすいことと関係している。

また、睡眠障害「ナルコレプシー」の患者においては、金縛りが頻繁に現れることが知られている。金縛りが繰り返し起こる場合は、「反復性孤発性睡眠麻痺」と診断されることもあるため、気になる症状が続くようなら専門機関に相談することをおすすめしたい。

ただし、この医学的な枠組みで説明できるのは、あくまでも睡眠中の金縛りについてだ。完全に目が覚めた状態で起こる「覚醒時の金縛り」については、睡眠麻痺の理論では説明がつかない。

覚醒時の金縛りについて

完全に目が覚めているにもかかわらず体が動かないという体験は、霊的な現象として語られることが多い。

霊的な金縛りを引き起こしやすいのは、いわゆる「霊媒体質」の人だといわれる。睡眠中の無防備な状態は、憑依霊にとってのターゲットになりやすい条件でもある。

本来、憑依とは霊にとっても高度な技術を要する行為だ。低級な霊は、病気の人や深く落ち込んでいる人間にしか近づけないとされる。しかしターゲットが睡眠中であれば、その障壁が下がり、力の弱い霊でもなにかの拍子に憑依できてしまうことがあるという。こうして肉体の自由を霊に奪われた状態が、霊的な金縛りの正体なのだ。

とはいえ、低級な霊には長く憑依し続けるだけの力はない。当人が意識を取り戻すと、憑依霊は人間の意志の力によって追い出されてしまう——これが金縛りの解けるしくみである。

金縛りの解きかた

意識を取り戻せば霊は追い出されると書いたが、生きている人間の体は霊にとって居心地がいい場所らしく、そう簡単に去ってはくれないらしい。意志(魂)の弱い人は、数時間、あるいは一晩中金縛りが解けずに苦しむこともあるという。

金縛りの最中、当人の霊魂は霊界に同調した状態にある。そのため、腕力で何とかしようとしても意味がない。この世のやりかたではなく、霊界での解きかたが必要なのだ。

まず大切なのは、「今の自分は霊界にいる」という自覚を持つこと。単なる夢だ、幻覚だと思っていると、憑依霊と対等に向き合うことができず、自分の意志を伝えることもできない。

霊に真っ向から立ち向かい、「私はあなたのような低級な霊魂には負けない、まったく怖くない」という揺るぎない意志(魂)で対抗することが求められる。身体や脳ではなく、自分自身の霊魂を呼び覚まし、憑依霊と対話することで、金縛りは解けていくのだ。

金縛り——解説②

金縛りとは、睡眠時に身体が硬直して身動きが取れなくなる現象のこと。医学的には「睡眠麻痺」と呼ばれているが、その全容はいまだ完全には明らかになっていない。

金縛りには大きく2つのパターンがあるとされる。ひとつは、脳が起きているのに体が寝ている状態による「脳の誤作動」的な現象。もうひとつは、霊的な原因によるものだ。

ここでは、霊的な金縛りについてあらためて整理しておきたい。

霊的な金縛りを経験しやすい人の多くは「霊媒体質」である。眠りについているときの無防備な状態は、憑依霊のターゲットとなりやすい。しかし、たとえ容易に憑依できたとしても、当人が意識を取り戻した瞬間、憑依霊はその意志の力によって弾き出されてしまう(これが金縛りの解ける瞬間だ)。

憑依という行為は、霊界とこの世の狭間で行われるもの。技術を持つ霊ならともかく、低級な霊は眠っている人間にしか近づけない。そのため、当人が意識を取り戻すと、混乱した霊は居場所を失って去っていくのだという。

ただし、霊媒体質の人は金縛りを引き起こす憑依霊だけでなく、さまざまな霊に影響を受ける可能性があることも念頭に置いておきたい。

金縛りの解き方(実践編)

前述のように、意識を取り戻すことで憑依霊は追い出されるのだが、生きている人間の体に居ついた霊は、なかなか離れようとしない。魂の弱い人では、数時間、あるいは一晩中苦しみ続けることもある。

金縛り中は霊魂が霊界に同調しているため、物理的な力でどうにかしようとしてもほぼ無意味だ。この世ではなく霊界のルールで動くことが必要なのである。

霊的な金縛りに遭遇したとき、まず自分の意識が「今は霊界にある」と自覚することが第一歩。夢か幻覚だと軽く流してしまえば、憑依霊と対等に渡り合うことはできない。

金縛りを解くには、霊に向かって「あなたのような低級な霊には負けない、まったく怖くない」という強い意志(魂)を持って対抗すること。身体や脳ではなく、自分の霊魂を呼び起こして憑依霊と向き合い、意識の力で霊を追い出すことが、霊界での「正しい解き方」なのだ。

金縛りと耳鳴りの関係

金縛りを経験した人のほぼ全員が、その前触れとして耳鳴りを体験していると言われている。この「予兆としての耳鳴り」は、医学的にも興味深い現象だ。

医学的見地によれば、睡眠麻痺(金縛り)の際の耳鳴りは、約1〜3kHz(キロヘルツ)の周波数帯で発生するとされている。最初は小さく聞こえ、徐々に音が大きくなっていくと同時に、体が硬直し始める——という流れが典型的なパターンだ。

医学的には、体の疲労状態と脳の覚醒状態のギャップが睡眠麻痺を引き起こすとされているが、なぜ耳鳴りを伴うのかについては、いまだ明確なメカニズムは解明されていない。

仰向けの姿勢で寝ていて耳鳴りを伴う金縛りは、多くの場合「睡眠麻痺」である可能性が高いとされる。たとえそのとき「霊を見た」という体験があったとしても、脳が作り出した幻覚である場合がほとんどだという。

一方で、横向きに寝ていたのに金縛りにあった場合や、耳鳴りなどの前兆がまったくないまま突然体が動かなくなった場合は、何らかの霊的な現象である可能性が高いかもしれない。

また、金縛りを引き起こすのは、必ずしも「他者の霊」だけとは限らない。その原因が「自分自身のエネルギー体(アストラル体)」というケースも実際に報告されている。

これは、幽体離脱(アストラル・トラベル)を頻繁に経験する体質の人に起こりやすい現象だ。幽体離脱から戻ろうとした際に時間軸のズレが生じ、過去や未来の自分に戻ろうとしてしまうことがある。多くの場合、寝ていたときのパジャマや服装が異なることで「時間がずれている」と気づく。

行き場を失ったアストラル体は、必死に自分の身体に戻ろうとする。しかしその時間軸では体に入ることができず、意識が遠のいたかと思うと気づいたら体に戻っていた——というような体験をすることになる。そしてその幽体離脱体験から数日〜数ヶ月後、激しい金縛りを経験することがあるというのだ。これは、アストラル体が戻ろうとして必死にもがいた行為の「余波」として起こる金縛りだといわれている。

参考ホームページ・文献等

厚生労働省 e-ヘルスネット - ナルコレプシーと睡眠麻痺:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/infor...

国立精神・神経医療研究センター - 睡眠の基礎知識:https://www.ncnp.go.jp/nimh/sleep/

日本睡眠学会 - 睡眠医学の基礎知識:https://jssr.jp/medical-info/

J-STAGE - 睡眠麻痺(金縛り)現象の生起機序:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr...

早稲田大学 - 睡眠研究と認知科学:https://www.waseda.jp/inst/research/news/5836...

Wikipedia - 睡眠麻痺(金縛り):https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9D%A1%...

CiNii - 金縛り現象に関する研究論文:https://ci.nii.ac.jp/naid/110004738595

筑波大学 IIIS - 睡眠医科学研究の最前線:https://wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/japanese/

MSDマニュアル - ナルコレプシーと付随症状:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83...

日本心理学会 - 睡眠と意識:https://psych.or.jp/publication/world081/...

NHK 健康ch - 金縛りのメカニズム:https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1117.html

済生会 - 睡眠麻痺(金縛り)の症状と原因:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disea...

滋賀医科大学 - 睡眠学講座:https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/outp...

東京医科大学 - 睡眠学分野の研究:https://www.tokyo-med.ac.jp/sleep/

日本生理学会 - 睡眠と生体リズム:https://physiology.jp/

久留米大学 - 睡眠医学研究所:https://www.kurume-u.ac.jp/site/sleep/

精神神経疾患研究基金 - 睡眠障害の研究支援:https://www.jfnm.or.jp/

大阪大学 - 睡眠と生体情報:https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/psy/slee...

北海道大学 - 精神医学と睡眠研究:https://www.hokudai.ac.jp/

Mayo Clinic - Sleep paralysis overview:https://www.mayoclinic.org/diseases-condi...

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