降霊術、あるいは交霊会(Séance)とは、霊媒者を介して、または特定の儀式や道具を用いて、死者の霊や高次の存在とコミュニケーションを図る試みです。その根源的な目的は、死後の世界の存在を確認し、霊魂の不滅を理解することにあります。また、失われた愛する者からのメッセージを受け取ったり、あるいは霊的な知識や助言を得たりすることも、この深遠な実践の重要な側面です。
スピリチュアリズムの観点からは、霊魂の死後存続や死者との交流という信仰が降霊術の根底にあり、その過程で霊媒が仲立ちとなることが多いとされています。哲学的な側面では、降霊術は物質に対する精神の優位を主張する「唯心論」とも訳され、唯物論とは対極に位置する思想を体現しています。
歴史的に見ると、降霊術は死者の魂を魔術的に呼び出す「ネクロマンシー」と混同されることもあります。しかし、ネクロマンシーが主に占いや情報収集を目的とし、特定の魔術的な呪文を用いるのに対し、近代スピリチュアリズムにおける降霊術は、霊的成長を促すための霊的交流という側面が強く、その目的と手法において明確な違いがあります。
死者との交流の試みは、人類の歴史と共に古くから存在し、その痕跡は古代エジプト、バビロニア、ギリシア・ローマの記録にも見られます。例えば、エジプトの魔術師が少年に呪文をかけ、手のひらに注がれたインクの中に霊を見せるという事例も記録されており、これらは現代の交霊術の直系の子孫とみなすこともできます。
19世紀以前の交霊会は、現在私たちが想像するような典型的な恐怖の光景とは異なっていました。当時の記述によれば、歌や祈りから始まり、霊が聖書を読むべき箇所を選んだり、物音を立てたり、光が降り注いだりする様子が描写されており、むしろ宗教的な集会や社交の場としての側面が強かったことがうかがえます。
近代スピリチュアリズムは、1848年にアメリカ・ハイズヴィルのフォックス姉妹によるポルターガイスト現象、特に壁や床を叩く音(叩音現象)をきっかけに始まりました。これは、死者と生者との交信が可能であるという思想運動であり、霊媒を介した交霊会がその核となりました。当初は「テーブル・ラッピング」や「テーブル・シッティング」などと呼ばれていましたが、1850年代後半以降にフランス語の「séance」(座ること、集まり)に由来する「交霊会」という言葉が一般化しました。
フランスの心霊術研究家アラン・カルデックは、その著作『霊の書』を通じてスピリチュアリズムの思想を体系化し、ヨーロッパのブルジョワサロンを熱狂させ、その思想は世界中に広まりました。
19世紀は科学、産業、都市化が急速に発展した時代であり、人々は合理的な説明を求める一方で、死後の世界や不可視の存在への根源的な問いを抱えていました。スピリチュアリズムは、霊魂が死後も生き続けるという「証拠」を提供することで、この時代の精神的な空白を埋める役割を果たしたと考えられます。当時の科学の最先端にいた科学者たち(クルックス、ロッジ、リシェ、W・ジェイムズなど)もこれらの心霊現象に夢中になり、スピリチュアリズムを「新しい時代の科学」、あるいは「科学の仲間入りをしようとした」ものと捉え、霊的現象を科学的手法で検証しようと試みました。これは、スピリチュアリズムが単なる迷信ではなく、当時の知的好奇心の対象であったことを示しています。
しかし、同時に交霊会は「19世紀最大の詐欺」ともみなされ、霊媒は正体を暴こうとする者たちから身を守る術を身につける必要がありました。例えば、著名な作家コナン・ドイルはスピリチュアリズムを深く信じ、その真実性を擁護しましたが、天才奇術師フーディーニは霊媒師のトリックを次々と暴き、両者の間に激しい対立が生じました。フーディーニは、ドイル夫人が自動書記によって受け取ったとされるメッセージが、実際にはフーディーニの亡き母からのものではないと指摘し、二人の友情に亀裂が入ったのです。このような奇術師による暴露は、霊的現象の真偽を見極めることの困難さ、そして人間の心理的な脆弱性、すなわち「信じたい」という願望が詐欺に利用されやすかったという側面を浮き彫りにします。これは、現代の「霊的ごった煮」状態にも通じる、真偽の判断の難しさという普遍的なテーマを示唆しています。
日本には1880年頃に「スピリチュアリズム」が上陸し、西洋のテーブル・ターニングが「こっくりさん」として広まりました。下田に漂着したアメリカ人がテーブル・ターニングを試みようとした際、テーブルがなかったために竹を結び合わせて飯櫃の蓋を載せて代用したものが、日本の文化に合わせて「こっくりさん」として受け継がれたとされています。こっくりさんは娯楽として大衆に普及し、1907年(明治40年)には玩具としても売り出されるほどの大ブームを巻き起こしました。
1900年代前半(明治30年代後半~明治40年代)には、日本で心霊研究が本格化し、当時のアカデミズムもこれに連携しようと試みました。大沢謙二、福来友吉、呉秀三などの学術研究者による論文集も刊行され、霊術を科学的に解明しようとする動きが見られました。しかし、千里眼事件(1909年~1911年)以降、アカデミズムは公には心霊研究から撤退したように見えましたが、研究自体は個々の研究者によって民間へとシフトされ、多くの心霊研究者と研究所が生まれるきっかけとなりました。
この時期、催眠術ブームから派生した「霊術」は、当局の取り締まりをかわすために「精神療法」「心理療法」などと名称を変え、大衆文化の中に霊性思想を構築していきました。大本などの宗教団体も鎮魂帰神法といった霊術的術式を取り入れ、信者を獲得していきました。
第二次世界大戦が終わると、前期霊性思想の中心であった霊術は「宗教団体」「疑似科学」「心霊研究機関」の3つに解体・再構築されました。心霊研究機関は日本心霊科学協会などの団体を設立し、超心理学へと発展していきました。
日本の霊性思想は、欧米の抽象的な哲学や思想よりも、具体的な体験や目に見える現象、あるいは検証可能な「術式」を重視する傾向にあったことがうかがえます。例えば、神智学が「技法より思想を優先させた」ために大衆から支持を得られなかった一方で、スピリチュアリズム的な術式は「可視化できるか否か」「実験可能かどうか」が重要な要素であり、これが大衆の関心を引きつけた要因であったとされています。この「可視化」や「実験可能性」への志向は、日本の伝統的な修験道や古神道における実践的な霊術の影響、あるいは明治維新以降の科学技術導入の波の中で、霊的現象もまた「実証」や「再現」を求められた結果と解釈できます。この傾向は、現代のK2メーターやスピリットボックスを使った超常現象調査にも通じる、科学技術と霊的探求の融合という現代的な傾向の萌芽を日本の歴史の中に見出すことができます。
19世紀末には、D・D・ホーム、フォックス姉妹、ユーサピア・パラディーノなど、人体や物品の空中浮揚や幽霊の出現といった「物理現象」を引き起こす「物理霊媒」が集中して現れ、この時期は「霊媒の時代」と呼ばれました。彼らの能力は「神からの贈り物」と見なされ、当時の社会に大きな影響を与えました。
しかし、前述のコナン・ドイルとフーディーニの対立に見られるように、霊的現象の真偽を巡る社会の葛藤は常に存在しました。霊的現象が時に巧妙なトリックによって再現可能であるという事実は、真の霊的探求を行う上で、常に識別力を磨くことの重要性を私たちに示唆しています。
降霊術は多岐にわたる形態を持ち、それぞれ異なる実践方法と得られる現象があります。ここでは、主要な降霊術の種類とその特徴を一覧で示し、その後、各方法について詳細に解説します。
降霊術の種類 | 主な特徴(霊との交信方法) | 必要な道具 | 推奨される参加人数 | 主な現象/得られる情報 |
---|---|---|---|---|
ウィジャボード(霊応盤) | 文字盤上の文字や記号をプランシェットが指し示し、メッセージを形成 | ウィジャボード、プランシェット(またはコイン) | 複数人(2人以上) | 文字によるメッセージ、質問への回答 |
テーブル・ターニング(テーブル交霊) | テーブルが回転、傾き、移動することでメッセージを伝え、叩音で回答 | テーブル | 数人 | テーブルの動き、叩音による回答 |
自動書記(オートマティック・ライティング) | 霊媒の手を霊が借りて文字を書き記す | 筆記用具(ペン、紙) | 霊媒1人(観察者同席可) | 文章によるメッセージ、霊的哲学、知恵、芸術的表現 |
トランス・ミディアムシップ(憑依型霊媒) | 霊媒が深いトランス状態に入り、霊が直接声帯を使って語りかける | 特になし(霊媒の能力に依存) | 霊媒1人、質問者 | 霊界からの直接の教え、哲学、知恵、エネルギーヒーリング |
物理的ミディアムシップ(物質化現象) | 霊媒を介して霊が物理的な現象(物体の移動、物質化、ラップ音など)を起こす | 特になし(霊媒の能力に依存) | 複数人 | 物体の浮揚・移動、物質化現象、ラップ音、楽器の演奏 |
ウィジャボードは、文字や数字、記号が書かれたボードと、それを指し示すためのプランシェット(またはコイン)を用いて霊からのメッセージを受け取る降霊術です。日本では「西洋版こっくりさん」とも呼ばれ、19世紀後半に流行したテーブル・ターニングから派生し、製品化されたことで広く普及しました。現代のポップカルチャーにも頻繁に登場し、交霊会の一般的な認識を形作っています。
ウィジャボードの実践は、適切な準備と心構えが不可欠です。
準備: 室内で行う場合は、窓を開けるなど換気を良くすることが推奨されます。雰囲気作りのためにキャンドルを灯すのは良いですが、決してボードと同じ机の上には置かないようにします。水や飲み物の入ったコップなども同様に、ボードから離して置くべきです。長時間行う場合は頻繁に休憩を取り、深呼吸やストレッチで身体をほぐすようにします。セッション終了後は、果物やお菓子を食べるなどして消耗した血糖値を補給することが推奨されます。
参加人数: 複数人(2人以上)で行うことが強く推奨されており、「1人で試すのはやめましょう」と警告されています。
指の置き方: 参加者全員が人差し指をプランシェットの上に軽く置きます。力を入れすぎず、プランシェットが自然に動くままにすることが重要です。
質問の仕方: 質問は心の中で念じるだけでなく、声に出してはっきりと尋ねるようにします。質問はシンプルかつ明確に行い、もし反応がない場合は質問の仕方を変えたり、範囲を絞ったりする工夫も必要です。
プランシェットの動き: 反応や手ごたえが感じられたら、聞きたいことを尋ねます。全く何も起こらない場合、軽く円を描くように指先に少しだけ力を加えてみることもあります。プランシェットが指し示した文字や記号の意味を読み取ります。
終了方法: 終わる際は、プランシェットをボード上の「GOOD BYE」の文字に移動させてから指を離すという手順を必ず守ります。もし何らかの動きがあった場合、メッセージを読み取ったら速やかに終了することが肝要です。長時間やっても反応がない場合は、その場は一旦中止し、日を改めた方が良いでしょう。
ウィジャボード(霊応盤)と、それに付属するプランシェットが必須となります。
集中できる静かな場所を選び、部屋を暗くし、ろうそくの光などを使用すると雰囲気が高まります。ただし、前述の通り、火の元には十分注意が必要です。
ウィジャボードの動きは、科学的には参加者の潜在意識(予期意向)が反映され、無自覚に指が硬貨を動かす「不覚筋動」の一種と見なされることがあります。ファラデーや井上円了、フランスの化学者ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールなどもこの説を支持しました。このことは、降霊術が単なる霊的現象だけでなく、人間の心理状態、特に集団心理や無意識が複雑に絡み合う現象であることを示唆しています。複数人で行うことで、個々の参加者の微細な筋肉の動きが無意識のうちに合わさり、プランシェットを動かす「集団的無意識の表出」となる可能性があります。長時間の使用が推奨されないのは、精神的な疲労や集中力の低下が、こうした無意識の動きを助長し、結果として意図しないメッセージや混乱を招くリスクがあるためと考えられます。この視点は、霊的現象を「科学的」あるいは「心理学的」に解釈しようとする試みと、オカルト的な「霊の憑依」説との間の興味深い対立と共存を示しています。
テーブル・ターニングは、19世紀後半に流行した降霊術で、数人がテーブルの周囲に集まり、手を軽くテーブルに触れることで、霊の力によってテーブルが回転したり、傾いたり、移動したりして質問に答えるというものです。スピリチュアリズム初期の交霊会で盛んに行われ、霊媒を介してあの世の霊の意志が表明されると考えられました。テーブルの動きだけでなく、叩音(ラップ音)によって質問に答えることもありました。
実践は比較的シンプルで、テーブルの周囲に数人が集まり、各自が手をテーブルに軽く触れることで始まります。その後、テーブルの動き(回転、傾き、移動)や、叩音によって霊からのメッセージを読み取ります。
テーブル・ターニングは日本に伝わり、下田に漂着したアメリカ人が試みようとした際にテーブルがなかったため、手近な竹を結び合わせて飯櫃の蓋を載せて代用したものが「こっくりさん」として受け継がれたとされています。こっくりさんも同様に、参加者が硬貨に指を置き、文字盤上の文字を指し示すことで霊との対話を行うという点で、そのルーツを共有しています。
自動書記は、霊媒が意識を集中させ、霊がその手を借りて文字を書き記すことでメッセージを伝える降霊術の一種です。心霊主義の立場では、憑依現象の一種であり、霊が霊媒の手を借りて意思表示や創作を行っていると説明されます。
自動書記の実践には、霊媒の深い集中と精神統一が必要となります。筆記用具(ペン、紙)を準備し、リラックスした状態で臨むことが重要です。コナン・ドイル夫人が自動書記を行った事例は有名です。
自動書記は、霊界からの哲学や知恵を伝える手段として重要視され、特に「シルバーバーチの霊訓」のような高級霊界通信の形で多くの霊的真理がもたらされました。また、画家ヒルマ・アフ・クリントは、神秘主義やスピリチュアリズムに傾倒し、交霊術の体験を通してアカデミックな絵画とは異なる抽象表現を生み出したとされており、自動書記が芸術創作の源泉となる可能性も示唆されています。
自動書記は心霊主義では霊の憑依と説明される一方、科学的には自己催眠の一形態、あるいは統合失調症や夢遊病、薬物使用によるケースも指摘されています。この二つの説明の並存は、降霊術が霊的な領域と人間の精神・心理的な領域の境界線上で起こる現象であることを示唆しています。霊的と見なされる現象の全てが純粋な霊の介入によるものとは限らず、個人の潜在意識や心理状態が強く影響を及ぼす可能性があります。これは、実践者が自身の精神状態を深く理解し、冷静な自己観察を行うことの重要性を示唆しています。また、安易な実践が精神的な不安定さを招く危険性も内包しているため、慎重な心構えが不可欠です。
トランス・ミディアムシップは、霊媒が深いトランス状態に入り、スピリット・ガイド(指導霊)と意識やエネルギーレベルで密接に同調することで、霊が霊媒の声帯を直接使って語りかける高度な降霊術です。これは英国のスピリチュアリズムにおいて長い歴史を持つ、非常に特殊なタイプの霊媒能力とされています。
霊媒はスピリット・ガイドとの緊密な結合を遂げるために、多大な時間と献身をかけて研鑽を積みます。霊媒が心を十分にリラックスさせ、ガイドとの信頼関係を築くことで、霊が自由に制限なく話せるようになります。この方法により、霊的な哲学や知恵が伝えられ、エネルギーヒーリングが提供されることもあります。
トランス・ミディアムシップでは、私たちと同じように地上での経験を積み、人生を深く理解している霊界の魂と協働します。彼らは霊界からより広い視野と多くの知識にアクセスできるため、素晴らしい教えをもたらすことが可能です。イギリスの伝統的なトランス・ミディアムシップでは、天使、神、宇宙人、天界の存在、自然霊、動物、植物とはワークしないのが特徴とされています。
現代では偽りのトランス・ミディアムが増え、多くのチャネラーが想像と妄想からワークをしているという指摘があります。この指摘は、トランス・ミディアムシップの高度な性質と、その真偽を見極めることの難しさを示唆しています。霊媒が深いトランス状態に入るため、意図的な詐欺だけでなく、霊媒自身の無意識や願望、あるいは低級な存在からの影響が、本物の霊的メッセージと混同されるリスクがあります。これは、霊的探求において「識別力」がいかに重要であるかを示しており、安易に霊的メッセージを信じることの危険性を警告しています。真の霊的成長には、霊媒自身の倫理観と、受信する情報の質を厳しく見極める姿勢が不可欠です。
物理的ミディアムシップは、霊媒を介して霊が物理的な影響を及ぼす現象を指します。これには、物体の空中浮揚や移動、幽霊の出現(物質化現象)、ラップ音、楽器がひとりでに鳴るなどが含まれます。
1850年代から70年代にかけて、D・D・ホームなどの物理霊媒によって盛んに物理現象が引き起こされました。初期の交霊会では、霊媒が椅子ごと空中に浮かび上がったり、ブーツが飛んだり、縛られたアコーディオンが美しいメロディを奏でたり、霊媒を縛っていた紐が数秒で解けたりといった現象が報告されています。テレビドラマ『ペニー・ドレッドフル』の一場面に見られるような、霊が憑依して部屋を混乱させる描写も、大衆文化における交霊会の典型的なイメージを形成しています。
現代の超常現象調査では、K2メーター(電磁場測定器)や「スピリットボックス」といった、霊が現れた科学的証拠を提供しようとする機器が用いられることもあります。
しかし、物理的ミディアムシップは「19世紀最大の詐欺」ともみなされ、フランシス・W・モンクのような霊媒が有罪判決を受け禁固刑に服した例もあるように、多くの霊媒がトリックを用いていたことが後に暴かれた事例も少なくありません。このため、その真偽の判断には極めて慎重な姿勢が求められます。
物理的ミディアムシップでは、物体の移動や物質化といった目に見える現象が起こるとされる一方で、それが「19世紀最大の詐欺」とみなされ、奇術師フーディーニによって多くのトリックが暴かれたという歴史があります。この事実は、物理的現象を伴う降霊術が、人間の五感に直接訴えかけるため、最もセンセーショナルでありながら、同時に最も詐欺に利用されやすい形態であることを示しています。視覚や聴覚に訴える現象は、信じる心を強く刺激するがゆえに、その裏に巧妙なトリックが隠されている可能性も高いのです。現代においても、超常現象の「科学的証拠」を求める傾向がありますが、その検証には極めて厳密な科学的手法と懐疑的な視点が必要不可欠です。安易に「目に見えるもの」を信じることの危険性を再認識させる必要があります。
降霊術は、単なる好奇心や娯楽として扱うべきではありません。霊的領域との対話は、深い敬意と適切な心構え、そして倫理的な責任を伴う行為です。
降霊術は遊び半分で行うべきではなく、呼び出す存在に対して常に真剣な態度と敬意を払うことが極めて重要です。セッションを始めるにあたって必ずしも儀式的なことを行う必要はありませんが、必要と感じるなら祈りや自作のチャントを詠唱したり、精神統一のために瞑想するなど、自分自身が最も最良と思えるやり方を実行することは、良い影響をもたらし、霊的領域への準備を整える助けとなります。
恐怖心はネガティブなエネルギーを引き寄せる可能性があるため、冷静さを保ち、恐怖心を抱かないように努めるべきです。予期せぬことが起きても、動揺せず冷静さを保つことが、安全な実践のために不可欠です。
質問はシンプルかつ明確に行い、呪いや死に関するネガティブな質問は避けるべきです。呼び出した存在を怒らせるような、敬意を欠いた態度や不適切な質問は、不必要なリスクを招くため避けるべきです。
降霊術を終える際は、定められた終了手順を必ず守ることが重要です。例えば、ウィジャボードの場合、「GOOD BYE」に移動させてから指を離すという手順を徹底します。長時間やっても反応がない場合は、その場は一旦中止し、日を改めるべきです。適切な終了儀式は、霊的エネルギーを閉じ、セッションを安全に終えるために不可欠です。
スピリチュアリズムでは、霊的真理は高級霊界から送られてくるものであり、地上人の魂の成長(霊的成長)に必要不可欠な知識であるとされています。このため、実践者は霊的真理を最高の指針とし、霊界の意向を忠実に伝達する責任があります。信頼に足る優れた霊界通信とは、物質の影響力を極力排除し、霊界の意向を忠実に伝達しているものとされます。実践者は、参加者の精神的・霊的保護を最優先に考え、無責任な行為を避けるべきです。
現代の精神世界では、心霊主義的技法とニューエイジ的技法が混在し、「霊的ごった煮」状態にあると指摘されています。アンケート調査では、多くの技法者がスピリチュアルと心霊主義の違いを正確に説明できないことが明らかになっており、この知識の欠如と混在が「エネルギー酔い」や「霊障」といった現象を引き起こす可能性が示唆されています。宗教学者の堀江宗正氏は、「エネルギー酔い」を「スピリチュアルを凝集させ、全面化させた空間にいだく違和感」と分析しています。
この状況は、情報過多の現代社会において、霊的知識が体系的に学ばれず、表面的な情報や流行によって安易に実践される傾向があることを示唆しています。知識の欠如は、霊的現象に対する誤解や、不適切な実践に繋がり、結果として精神的な不調や予期せぬ霊的影響(霊障)を招く危険性を高めます。これは、降霊術を試みる一般の人々に対して、安易な情報に流されず、信頼できる情報源から学び、自身の識別力を養うことの重要性を強く訴える必要があります。真の霊的成長には、深い理解と慎重な姿勢が不可欠です。善霊と邪霊を見分ける基本のテキストも存在し、それらを学ぶことで識別力を高めることができます。
降霊術は神秘的な体験をもたらす一方で、不適切な実践は精神的・肉体的な危険を伴う可能性があります。安全に霊的探求を進めるために、以下の点に細心の注意を払う必要があります。
降霊術は心身に重大な危害が及ぶ可能性があり、特に精神的な不安定さや疲労を引き起こすことがあります。現代の精神世界イベントでは、「エネルギー酔い」と呼ばれる吐き気や入眠時幻覚などの不快な現象が報告されており、これはスピリチュアルな空間に抱く違和感から生じると分析されています。霊的領域との接触は、個人のエネルギー状態や感受性に大きな影響を与える可能性があるため、自身の心身の状態を常に把握し、無理のない範囲で実践することが重要です。
霊的真理は高級霊界から送られてくるものであり、信頼に足る優れた霊界通信は物質の影響力を極力排除し、霊界の意向を忠実に伝達しているとされます。しかし、低級霊や悪意ある存在が介入するリスクも常に存在します。これらを見分ける識別力と、適切な対処法を身につけることが重要です。例えば、ネガティブな質問をしない、常に敬意を払う、そして終了儀式を徹底するといった基本的なルールを守ることで、不必要な干渉を防ぐことができます。
降霊術の実践中には、お酒などのアルコールやドラッグなどを摂取してはなりません。これらは意識を混濁させ、霊的な感受性を歪め、判断力を低下させます。その結果、低級な存在や悪意ある存在を引き寄せたり、自身の精神的な防御を弱めたりするリスクが極めて高まります。常に明晰な意識を保つことが、安全な実践の絶対条件です。
ウィジャボードを毎日毎晩、連続して使用してはならず、1週間に1度か2度程度にすべきだと言われています。長時間のセッションは心身に大きな消耗をもたらすため、頻繁に休憩を取り、精神的な疲労を蓄積させないことが重要です。過度な実践は、精神的なバランスを崩し、望ましくない霊的影響を受けやすくなる原因となります。
ウィジャボードのような降霊術の道具には、その実践を通じて特定のエネルギーや意識が蓄積され、一種の「霊的属性」を持つようになると考えられます。そのため、道具の扱い方には細心の注意が必要です。
例えば、ウィジャボードを粗末に扱ったり、燃やしたりすると、呼び出した存在が怒り、災いが降りかかるという迷信があります。また、ボードを売ったり譲ったりすると、呼び出した存在がそのボードに憑依し、新しい持ち主に災いをもたらすという迷信も存在します。これらの「迷信」は、単なる言い伝え以上の、心理的・霊的な側面を示唆しています。道具を粗末に扱うことは、その道具を通して繋がった霊的エネルギーや存在に対する敬意の欠如と見なされ、実践者の潜在意識にネガティブな影響を及ぼす可能性があります。これは、道具そのものに霊が憑依するというより、実践者の心と道具との間に形成される「霊的な結びつき」が、その後の心理状態や経験に影響を与えるという因果関係を示唆しています。
もし道具を処分する必要がある場合は、3つに割ってから聖水(塩水でも可)をかけ、白い布に包んで捨てるという方法が紹介されています。これは、道具に宿ったエネルギーを浄化し、安全に手放すための儀式的な意味合いを持ちます。道具の適切な扱いは、単なる迷信ではなく、実践者の精神的な保護と、霊的領域への敬意を保つための重要な行為なのです。
降霊術の実践を検討する方のために、以下のチェックリストを参考にしてください。
カテゴリ | 項目 | 詳細 |
---|---|---|
実践前 | 心構え | 真剣な態度と敬意を持つ |
恐怖心を持たない | ||
精神統一のための瞑想や祈りを行う(任意) | ||
環境設定 | 静かで集中できる場所を選ぶ | |
換気を良くする(室内で行う場合) | ||
キャンドルや飲み物をボードと同じ机に置かない | ||
道具の準備 | ウィジャボード、プランシェットなど必要な道具を揃える | |
実践中 | 参加人数 | 複数人(2人以上)で行う。決して1人で行わない |
指の置き方 | プランシェットに軽く指を置く。力を入れすぎず、自然に動くままにする | |
質問の仕方 | 声に出して、シンプルかつ明確に尋ねる | |
反応がない場合は質問の仕方を変えたり、範囲を絞ったりする | ||
注意点 | アルコールやドラッグは厳禁 | |
呪いや死に関するネガティブな質問は避ける | ||
呼び出した存在を怒らせるような態度や質問は避ける | ||
予期せぬことが起きても冷静さを保つ | ||
実践後 | 終了方法 | ウィジャボードの場合、「GOOD BYE」に移動させてから指を離すなど、定められた手順を必ず守る |
長時間反応がない場合は、一旦中止し日を改める | ||
心身のケア | 頻繁に休憩を取り、深呼吸やストレッチで身体をほぐす | |
果物やお菓子を食べるなどして消耗した血糖値を補給する | ||
道具の扱い | ボードを粗末に扱わない | |
ボードを燃やさない | ||
ボードを売ったり譲ったりしない | ||
捨てる場合は、3つに割って聖水(塩水可)をかけ、白い布に包んで捨てる | ||
霊的保護 | 霊的真理を指針とし、識別力を養う |
降霊術は、単なる現象の追求に留まらず、死後の世界の存在、霊魂の不滅、そして生と死の連続性について深く考える機会を提供します。適切に行われれば、失われた愛する者との再会、霊的知識の獲得、そして自身の霊的成長を促す貴重な経験となり得ます。
霊的探求の道は、自己の精神性を見つめ、霊的真理を探求する旅の一部です。この旅において、常に識別力を持ち、謙虚な姿勢で霊的領域と向き合うことが、真の霊的成長への鍵となります。安易な好奇心や娯楽ではなく、深い敬意と責任感をもって神秘との対話に臨むことで、私たちはより豊かな霊的理解と、内なる平和を見出すことができるでしょう。