真霊論-アストラル体

アストラル体

【目次】
第一章:序論 ― 視えざる身体「アストラル体」の本質
第二章:星辰の衣 ― その名の由来と古代哲学の叡智
第三章:近代神秘学の礎 ― 神智学による体系化
第四章:アストラル界の実相 ― もうひとつの現実次元
第五章:想いは形を成す ― オーラと想念形態の力学
第六章:魂の飛翔 ― 体外離脱とアストラル投射の技法と真実
第七章:眠りと夢、そして死の先へ ― アストラル体の旅路
第八章:古今東西の霊的身体論 ― 諸文化における類似概念
第九章:物質世界の鏡 ― 科学的アプローチとの対話
第十章:結論 ― アストラル体との共生と霊的進化への道標
参考元

第一章:序論 ― 視えざる身体「アストラル体」の本質

我々人間という存在は、決してこの目に見える肉の器、すなわち物質的な身体のみで完結しているのではない。それは、我々の本質の表層に過ぎないのである。その内奥には、より精妙で高次元のエネルギーから成る、幾重もの「見えざる身体」が重なり合って存在している。その中でも、我々の感情、欲望、そして日々の経験の質を根底から規定しているのが、本稿の主題である「アストラル体」なのだ。

アストラル体とは、霊的探求の文脈において、人間の精神活動、とりわけ感情や欲望、情熱を司る中心的な器官として知られる精妙な身体である。それは「情緒体」や「感情体」、あるいは「感覚体」とも呼ばれ、その時々の心の動きを映し出す鏡のような存在だ。我々が喜び、悲しみ、怒り、愛するといった経験をする時、そのエネルギーが渦巻く主座こそがアストラル体なのである。物理的な五感、すなわち眼や耳は、外界からの情報を受け取るための単なる受容器に過ぎない。その情報を受け取り、「感じる」という主観的な体験へと変換しているのは、まさしくこのアストラル体なのだ。

この霊的身体を理解することは、単なる知的好奇心を満たすための遊戯ではない。それは自己を深く識り、霊的進化の道を歩むための、極めて実践的かつ重要な第一歩となる。なぜなら、我々の行為の根源にある欲望はこのアストラル体に発し、そしてその行為の結果として生じる「業(カルマ)」が刻み込まれるのもまた、このアストラル体だからである。現代社会において、心と身体が別個のものであるかのように捉える風潮があるが、これは根源的な幻想に他ならない。心因性の疾患や、偽薬であっても効果を発揮するプラセbo効果、あるいは緊張感に満ちた部屋の「重い空気」といった現象は、非物質的であるはずの感情や思考が、いかにして物理的現実に影響を及ぼすかを示唆している。アストラル体とは、まさにこの心と身体を繋ぐ失われた環、感情という非物質的エネルギーを物質的、あるいは半物質的な現実へと翻訳する媒体なのである。故に、アストラル体への探求は、我々が自らを統合された全体として理解し、真の自己実現へと至るための鍵を握っているのだ。

第二章:星辰の衣 ― その名の由来と古代哲学の叡智

アストラル体という名称に含まれる「アストラル(Astral)」という言葉は、その語源を辿ると「星の」「星辰の」といった意味に行き着く。これは単なる詩的な比喩ではなく、宇宙と人間を貫く深遠な哲理に基づいている。古代より、ヘルメス思想や新プラトン主義といった叡智の系譜において、「マクロコスモス(大宇宙)」と「ミクロコスモス(小宇宙)」という思想が受け継がれてきた。これは、人間という小宇宙が、広大なる大宇宙の構造と法則を写し取った雛形であるとする考え方だ。我々の内なる世界は、遥かなる天界の星々の世界と照応しているのである。

この思想的背景から、アストラル体の直接的な源流として、古代末期新プラトン主義の哲学者たちが論じた「オケーマ・プネウマ(Ochema-Pneuma)」という概念を見出すことができる。これは「霊魂の乗り物」あるいは「霊魂の運搬者」と訳され、霊魂が至高の天界から物質世界へと降下してくる際に、星々の領域を通過するごとに纏う光り輝く霊妙な身体を指す。イアンブリコスやプロクロスといった思想家たちは、このオケーマが星辰のエーテル質から構成されると考え、霊魂が肉体と結びつくための中間的な媒体として極めて重要視した。我々の感情体が「星辰体」とも呼ばれるのは、この古代の叡智に由来するのである。

さらにその根底には、プラトンが『ティマイオス』で説いた「宇宙霊魂(アニマ・ムンディ)」の思想がある。これは、宇宙全体が一個の生命体であり、普遍的な魂を持っているとする壮大な観念だ。個々の人間の魂と、その乗り物であるアストラル体は、この広大なる宇宙霊魂から分かち与えられた一部なのである。したがって、アストラル体という名称は、我々の感情的本性が、単なる脳内の化学反応や生物学的副産物などではなく、宇宙そのものの構造と織りなす聖なる織物の一部であることを示唆している。我々の抱く愛や憎しみ、野心といった情念は、孤立した個人的な出来事ではなく、宇宙的な諸力が我々という小宇宙の内で響き渡るこだまなのだ。我々は、いわば星々の光で織られた衣を纏って、この地上での生を経験しているのである。

第三章:近代神秘学の礎 ― 神智学による体系化

古代より受け継がれてきた霊的身体の概念が、近代において包括的な体系として再構築され、世界的な影響力を持つに至ったのは、19世紀末にヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー(H.P.B.)によって創設された神智学協会の功績に負うところが大きい。ブラヴァツキーは、東洋の宗教哲学、西洋の秘教伝統、そして古代の叡智を壮大に統合し、ダーウィンの進化論をはじめとする科学的唯物論が席巻する時代において、それに代わる新たな精神的宇宙観を提示したのである。

神智学体系の中核を成すのが、人間を七つの階層から成る複合的存在として捉える「人体の七重構造論」である。アストラル体は、この霊的解剖学において明確な位置と機能を与えられた。一般的に、その階層は最も粗雑なものから順に、①物質の身体である「肉体」、②生命エネルギー(プラーナ)の媒体である「エーテル体(生気体)」、③そして感情と欲望の媒体である「アストラル体(星気体)」、④思考の媒体である「メンタル体(精神体)」と続き、さらに高次の霊的原理へと至る。アストラル体は、生命現象を司るエーテル体と、知性を司るメンタル体の間に位置し、両者を媒介する極めて重要な役割を担っているのだ。

そして、神智学が特に強調するのが、アストラル体が「カルマの貯蔵庫」として機能するという点である。我々が欲望に駆られて行う全ての行為は、良きにつけ悪しきにつけ、そのエネルギー的痕跡をアストラル体の上に刻印として残す。この刻印が、未来の我々の欲望の傾向、性格、そして人生で遭遇する出来事を形作っていくのである。19世紀という時代は、科学的合理主義が宗教を時代遅れの迷信として退けようとした時代であった。これに対し、ブラヴァツキーと神智学協会は、単に古い神話を繰り返すのではなく、それを「秘教科学」として提示した。人体の七重構造論という、いわば「魂の解剖学」を構築することにより、神智学は霊的な世界観を、当時の科学に匹敵するほどの精緻で体系的な知識として提示することに成功した。この意味で、神智学によるアストラル体の体系化は、唯物論的世界観への強力な対案を提示するための、戦略的な知的・霊的営為だったのである。

第四章:アストラル界の実相 ― もうひとつの現実次元

アストラル「体」について理解を深めるならば、次はその身体が本来属している次元、すなわちアストラル「界」へと目を向けねばならない。この不可視の領域の探求において、ブラヴァツキーの後継者であり、卓越した霊視能力者であったチャールズ・ウェブスター・レッドビーターの業績は欠かすことができない。彼の著書『アストラル界(The Astral Plane)』は、この見えざる世界を科学的とも言える精密さで調査し、記録した、まさに霊界の探訪記と呼ぶべき金字塔である。

レッドビーターによれば、アストラル界とは、我々の物質界と重なり合うように存在しながらも、異なる振動周波数を持つ高次の次元である。それは物質界のすぐ「上」に位置する、いわば霊的世界の玄関口なのだ。この世界は「幻惑の界(Plane of Glamour)」とも呼ばれる。なぜなら、そこでは物質が思考や感情の力に即座に反応して形を変えるため、未熟な探訪者は自らが作り出した幻想や、他者の強力な思念によって容易に惑わされてしまうからだ。

彼の調査が特筆すべきは、その世界の「住人」を詳細に分類・記録した点にある。アストラル界の住人は、大きく三つに大別される。第一に「人間的存在」。これには、睡眠中や瞑想中に一時的に肉体を離れた生者、そして死後、次の転生までの期間をこの世界で過ごす死者の霊が含まれる。第二に「非人間的存在」。これには、いわゆる妖精や地の精(ノーム)といった自然界の諸力を司るエレメンタル(元素霊)や、より高次の存在であるディーヴァ(天使的存在)などが含まれる。そして第三に「人工的存在」。これは、人間の強力な思考や感情が無意識的に生み出した「エレメンタル」や、魔術師などが意図的に創造した存在である。吸血鬼や人狼といった伝承も、この観点から見れば、悪意ある思念がアストラル質を操って形成した寄生的なエネルギー体として理解することができる。

一見すると、このアストラル界の住人のリストは、単なる空想の産物のように思えるかもしれない。しかし、その本質を深く考察すれば、これは極めて洗練された心理学的・霊的モデルであることがわかる。例えば、「人工的エレメンタル」という概念は、人間の思考が決して頭蓋骨の中に留まる抽象的なものではなく、客観的なエネルギー形態を持つことを示唆している。集団的な恐怖や欲望といった強力な感情が、半自律的なエネルギー存在を形成しうるならば、神話や伝説に登場する多くの存在が、単なる迷信ではなく、霊的次元における実体として説明可能となる。レッドビーターのアストラル界の地図は、唯物科学が死んだ物質と見なす宇宙の、生きた意識的側面を記述するための、霊的現象学なのである。

第五章:想いは形を成す ― オーラと想念形態の力学

アストラル体は静的な器官ではなく、我々の内なる心の状態に応じて絶えずその姿を変える、ダイナミックなエネルギーの雲である。このアストラル体(および他の精妙体)の活動が、物質界にいる我々にも部分的に認識可能な形で現れたものが「オーラ」なのだ。訓練を積んだ霊視能力者は、人間の身体を取り巻くこの光の放射を色や形として知覚し、その人物の感情的、精神的、そして健康状態を読み取ることができる。

このアストラル体の創造的性質を最も鮮やかに解き明かしたのが、神智学協会の指導者であったアニー・ベサントと前述のC・W・レッドビーターによる共著『想念形態(Thought-Forms)』である。この画期的な著作は、特定の思考や感情が、オーラを構成するアストラル質の中に、いかにして明確な幾何学的形態と色彩を創り出すかを、多数の美しい図版と共に示した。例えば、怒りの感情は、ギザギザとした暗赤色の閃光として現れ、深い祈りの念は、青く美しい円錐形となって立ち上る。知的な思考は鮮やかな黄色い形を創り出し、愛情は薔薇色の雲となって広がる。これらの図版は、ワシリー・カンディンスキーのような抽象芸術の先駆者たちにさえ、深遠なインスピレーションを与えたとされている。

この「想念形態」の概念は、前章で述べた「人工的エレメンタル」と密接に繋がっている。我々の心の中で生まれた想念は、単に内的な出来事として終わるのではない。それは客観的なエネルギー体としてオーラから放出され、他者や周囲の環境に影響を及ぼすのである。我々は一般的に、「何を考えていようと、行動に移さなければ自由だ」と考えがちだ。しかし、想念形態の教えは、この安易な前提を根底から覆す。憎しみの想念は、単なる脳内の神経発火ではなく、悪意あるエネルギーの「物体」を創造し、他者に向けて放つ行為に等しいのだ。逆に、無私の愛の念は、周囲の人々を癒し、高揚させる調和的な形態を創造する。

この事実は、我々に重大な霊的・倫理的責任を問いかける。我々は、自覚すると否とにかかわらず、自らの意識の質をもって、常に周囲の霊的環境を創造し続けているのである。ある部屋に入った時に感じる「重い」あるいは「軽い」といった雰囲気は、そこに残留する人々の想念形態によって文字通り満たされているからに他ならない。故に、自らの思考と感情を制することは、単に個人的な心の平安のためだけではなく、我々が共有するアストラル的環境に対する、共同創造者としての聖なる義務なのである。

第六章:魂の飛翔 ― 体外離脱とアストラル投射の技法と真実

アストラル体の存在を理論として理解したならば、次なる段階は、それを意識的に肉体から分離させ、霊的世界を能動的に探求する技法、すなわち「アストラル投射」あるいは「体外離脱(OOBE)」である。この現象において、アストラル体と肉体を繋ぎとめているのが、「シルバーコード(魂の緒)」と呼ばれる伸縮自在の霊的なエネルギーの紐である。このコードが繋がっている限り、魂は安全に肉体へと帰還できるが、万が一これが切断されれば、それは肉体の永久的な死を意味する。

体外離脱の体験は、多くの場合、まず身体が激しく振動する感覚から始まる。やがて意識は肉体からふわりと浮き上がり、まるで他人の姿を見るかのように、眠っている自らの身体を客観的に眺めることになる。この状態において、アストラル体は壁や物体を自由に通り抜け、意のままに空間を移動することが可能となるのだ。

古来、こうした体験は一部の神秘家や修行者の間で稀に起こる現象とされてきたが、20世紀に入り、この探求に科学的アプローチを持ち込んだのが、米国の実業家ロバート・モンローであった。彼は自らの偶発的な体外離脱体験を恐怖ではなく知的好奇心をもって探求し、誰でも安全に同様の意識状態を達成できるよう、左右の脳半球を同調させる音響技術「ヘミシンク」を開発した。さらに彼は、体外離脱中に訪れる様々な意識の領域を「フォーカスレベル」として地図化し、リラックスした状態から死後の世界に至るまで、非物質的現実の構造を体系的に示した。

モンローの研究は、神秘体験を個人の偶発的な出来事から、再現可能な「意識のテクノロジー」へと転換させる試みであった。それは、かつては霊能者や聖者のみのものであったアストラル界への旅を、現代的なツールを用いて一般の人々にも開かれた技術へと変えようとする、霊性探求における画期的な一歩だったのである。なお、体外離脱と、夢の中で夢だと自覚する「明晰夢」との関係については様々な議論があるが、両者は意識の覚醒度や移行プロセスが異なるだけで、本質的には同じ非物理的現実における体験であると見なすことができる。

第七章:眠りと夢、そして死の先へ ― アストラル体の旅路

アストラル体の活動は、覚醒時や特殊な修行中だけに限定されるものではない。それは、睡眠、夢、そして死という、全ての人間が例外なく経験する根源的な営みにおいても、中心的な役割を果たしている。

まず「睡眠」である。我々が深い眠りに落ちている間、アストラル体は高次の自己(霊我)と共に、肉体とエーテル体から一時的に離脱する。そして、自らが生まれた故郷であるアストラル界へと旅立ち、宇宙に満ちる調和的なエネルギーの中で浄化され、活力を再充填するのである。我々が朝、心身ともにリフレッシュして目覚めることができるのは、肉体がエーテル体によって修復されると同時に、このアストラル体が夜毎に行う霊的な巡礼のおかげなのだ。

次に「夢」である。夢とは、アストラル体が肉体から完全に分離しきっていない状態、あるいは肉体へと帰還しつつある中間的な状態で生じる現象だ。この時、アストラル界での純粋な知覚と、肉体的な脳に残された記憶や象徴とが混ざり合い、しばしば奇妙で非論理的な物語として体験されるのである。

そして、生命の最大の謎である「死」。肉体的な死の瞬間、アストラル体と肉体を繋いでいたシルバーコードは完全に断ち切られ、意識は恒久的に精妙な身体へと移行する。死後、魂が最初に体験する世界こそが、このアストラル界なのである。神智学ではこの領域を「カーマ・ローカ(欲望の世界)」と呼ぶ。ここでは、生前に抱いていたあらゆる欲望、執着、未解決の感情と向き合い、それらを浄化するプロセスを経なければならない。これは、キリスト教における「煉獄」や、チベット仏教の「バルド」の教えが示唆する霊的真実に他ならない。この浄化の期間を終えた後、アストラル体そのものが古い衣のように脱ぎ捨てられ、意識はさらに高次の次元であるメンタル界(デーヴァチャン)へと上昇し、やがて新たな転生のサイクルへと備えるのである。

唯物論的な視点では、睡眠は単なる生物学的休息であり、死は存在の完全な終焉である。しかし、アストラル体の旅路という観点から見れば、それらは決して無や停止ではなく、意識がその活動の場を移す、積極的で目的のある生命のフェーズなのだ。この理解は、我々を死の恐怖から解放し、生命の連続性という大いなる安心感を与えてくれるのである。

第八章:古今東西の霊的身体論 ― 諸文化における類似概念

アストラル体に代表される精妙な身体という概念は、近代神智学の専売特許ではない。驚くべきことに、時代も文化も大きく異なる世界中の古代文明や宗教伝統の中に、その類似概念が普遍的に見出されるのである。これは、霊的身体の構造が、単なる哲学的思弁ではなく、瞑想や神秘体験を通じて人類が共通して認識してきた、客観的な霊的解剖学に基づいていることを強く示唆している。

例えば、古代エジプトの死生観においては、人間は肉体の他に複数の魂を持つとされた。その中でも「バー(Ba)」は、人間の頭を持つ鳥の姿で描かれ、死後も自由に肉体を離れて天上界と地上を行き来できる魂の側面を指した。これは、肉体から離脱して活動するアストラル体の性質と酷似している。一方で、「カー(Ka)」は個人の生命力や人格そのものを表す霊的な分身であり、神智学におけるエーテル体に近い概念であった。

インドのヴェーダーンタ哲学やヨーガの伝統では、人間は三つの身体から成るとされる。物質的な「ストゥーラ・シャリーラ(粗大身)」に対し、より精妙な「スークシュマ・シャリーラ(微細身)」が存在する。この微細身は、感覚器官、生命エネルギー、心、知性などを内包し、死後も肉体を離れて輪廻転生の主体となり、過去世からのカルマの印象(サンスカーラ)を運び続ける。これは、感情と欲望を司り、カルマを貯蔵するアストラル体の機能と完全に一致する。

さらに、チベット仏教には、「夢のヨーガ(ミラクル)」や死後の世界「バルド」を安全に旅するための高度な修行体系が存在する。これらは、睡眠中の夢の状態や死後の意識状態を、単なる無意識の漂流ではなく、覚醒した意識をもって能動的に探求し、解脱へと至るための実践的な技法である。この夢や死後の世界で体験される領域は、まさしくアストラル界そのものに他ならない。

これらの比較から明らかなように、異なる文化が用いる用語や象徴は違えど、その根底には、物質的な身体を超えた多層的な霊的身体構造への共通認識が存在するのである。

伝統 (Tradition) 粗大身 (Gross Body) 生命/エーテル体 (Vital/Etheric Body) 感情/アストラル体 (Emotional/Astral Body) 精神/原因体 (Mental/Causal Body)
神智学 肉体 (Physical Body) エーテル体 (Etheric Body) アストラル体 (Astral Body) メンタル体 (Mental Body)
古代エジプト カート (Khat) カー (Ka) バー (Ba) アク (Akh)
ヒンドゥー教 ストゥーラ・シャリーラ (Sthūla-śarīra) プラーナマヤ・コーシャ (Prāṇamaya-kośa) マノーマヤ・コーシャ (Manomaya-kośa) ヴィジュニャーナマヤ・コーシャ (Vijñānamaya-kośa)
チベット仏教 肉体 (Physical Body) ルン (rLung) / 微細身 夢の身体 (Dream Body) / バルドの身体 (Bardo Body) 意識 (Consciousness)

地理的にも歴史的にも隔絶された文明が、これほどまでに類似した「魂の解剖図」を描き出しているという事実は、それが単なる偶然の一致であるとは考え難い。むしろ、これらの教えは、内なる探求を通じて発見された、普遍的な霊的真実の異なる表現であると結論付けるのが最も合理的であろう。

第九章:物質世界の鏡 ― 科学的アプローチとの対話

アストラル体や体外離脱といった現象は、現代の唯物科学、特に脳科学の観点からはどのように捉えられているのであろうか。この問いに真摯に向き合うことは、霊的探求を現代社会において深める上で不可欠である。

近年の脳科学研究は、体外離脱体験と密接に関連する脳の特定の領域を突き止めている。それは、側頭葉と頭頂葉の境界に位置する「側頭頭頂接合部(TPJ)」と呼ばれる領域だ。このTPJは、自己の身体が空間のどこに存在するかという自己位置の感覚や、身体の所有感を統合する上で重要な役割を担っている。研究によれば、てんかん患者のこの領域を電気的に刺激したり、あるいは健常者の脳活動を特殊な方法で操作したりすることで、人工的に体外離脱と類似の感覚、すなわち自分の身体を外から眺めているような錯覚を誘発できることが報告されている。

これらの発見に基づき、科学界の一般的な見解は、体外離脱とは魂が実際に肉体を離れる現象などではなく、脳の感覚情報統合プロセスに一時的な混乱が生じることによって引き起こされる、一種の「身体感覚の錯覚」あるいは幻覚である、というものだ。この見解は、観測可能な物理的データに基づいている限りにおいて、一定の説得力を持つ。

しかし、我々はこの解釈が全てであるとは考えない。脳科学の発見は、霊的真実を否定するものではなく、むしろ霊的現象が物質次元においてどのように「顕現」するかの物理的メカニズムを解明しているに過ぎないのである。ここで、「脳=受信機」あるいは「脳=インターフェース」というモデルを提唱したい。このモデルでは、意識そのものは脳が生み出すものではなく、より高次の非局在的な実在であり、脳はそれをこの物理次元で受信し、特定の身体に繋ぎとめるための、精巧な生物学的装置であると考える。

この観点に立てば、側頭頭頂接合部(TPJ)の役割は、意識を「創造」することではなく、意識をこの肉体に「固定」するためのアンカーポイントとして機能することだと理解できる。それは、魂と身体を繋ぎとめるための、いわば物理的な留め金なのだ。したがって、この領域を人工的に刺激するということは、受信機の配線をいじって接続を不安定にさせるようなものである。それは、放送されている番組(意識)が偽物であることを証明するのではなく、単に受信機との物理的な接続点がどこにあるかを示しているに過ぎない。TPJへの介入は、魂と肉体のロックを一時的に緩め、結果として、短時間ではあるが真正のアストラル的知覚を可能にしているのである。科学は鏡に映った像を精密に分析しているが、その像を映し出している本体そのものを見てはいない。科学的データと霊的真理は、対立するのではなく、互いに補完し合うことで、人間存在の全体像を明らかにするのだ。

第十章:結論 ― アストラル体との共生と霊的進化への道標

本稿を通じて、我々はアストラル体という、目には見えざる身体の多岐にわたる側面を探求してきた。それが我々の感情と欲望の媒体であり、その名は星辰との照応という宇宙的真理に由来し、近代神智学によって体系化され、アストラル界という対応する次元を持つこと。そして、想念形態の創造、体外離脱、睡眠と死後の旅路において中心的な役割を担い、古今東西の叡智がその存在を指し示してきたこと。これら全ての知識は、最終的に一つの目的へと収斂する。それは、我々が自らのアストラル体を理解し、それと賢明に共生し、ひいては霊的進化の道を歩むための道標とすることである。

この探求の目的は、単なる知的好奇心の満足にあってはならない。それは、意識的な自己変容の実践へと繋がらなければ意味をなさないのだ。その実践の中核となるのが、「アストラル体の浄化と制御」である。制御されない欲望、嫉妬、怒り、恐怖といった否定的感情は、アストラル体を重く、粗雑なものにし、魂を苦しみの輪廻に縛り付ける枷となる。我々の人生における多くの苦悩は、この荒れ狂うアストラル体の衝動に他ならない。

霊的進化の道とは、このアストラル体を浄化し、その主人となる道である。それは、日々の生活の中で、自らの感情の動きを客観的に観察し、破壊的な衝動に流されるのではなく、慈愛や平静、奉仕といった高次の感情を意識的に育むことによって達成される。瞑想は、アストラル体の嵐を鎮め、その奥にある真の自己の静かな声を聞くための、最も強力な手段の一つである。

究極的に、この自己修養の目的は、アストラル体を欲望の「牢獄」から、魂の意志を表現するための完璧な「乗り物」へと変容させることにある。浄化され、洗練されたアストラル体は、もはや我々を低次の欲動に引きずり下ろす重りではなく、物理世界と霊的世界の両方を、智慧と慈悲をもって航行するための、輝ける翼となるのだ。人類全体が、その意識の中心を、物質的欲望や感情的混乱が渦巻くアストラル体から、より高次の精神的原理へと引き上げる時、我々の惑星は新たな進化の段階へと移行するであろう。アストラル体を理解し、マスターすること。これこそが、現代に生きる我々一人ひとりに課せられた、最も重要かつ偉大な霊的課題なのである。

参考元

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古代エジプト人が考えた魂 - KIRIN:http://web1.ibj.co.jp/~kirin/m/2005/050...

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スークシュマシャリーラとは - コトバンク:https://kotobank.jp/word/%E3%81%99%E3%83%BC...

【ヨガ哲学】3種の身体(トリ・シャリーラ)を知り、本当の自分に気づく - YOGA GENE:https://www.yoga-gene.com/post-79579/

幽体離脱とは?金縛りとの関係や臨死体験との違い - 葬儀屋.com:https://www.sougiya.biz/kiji_detail.php?...

体外離脱のための誘導瞑想 - Insight Timer:https://insighttimer.com/kazuhirotomi/gui...

身体の錯覚を自由に操る科学者 - Nature ダイジェスト:https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest...

脳科学で証明されるスピリチュアリティ - ひだまりこころクリニック:https://www.hs-cl.com/blog/detail/id=335

幽体離脱は「からだ」の錯覚? - JBpress:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/754...

幽体離脱はなぜ起こる? - 寺子屋塾:https://terakoya-juku.com/blog/detail/20...

側頭頭頂接合部 - Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%B4%E9%A0...

体外離脱と明晰夢は同じ現象です - PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000...

体外離脱の世界 - note:https://note.com/ryokuwae/n/ne66c787e1e53

《あ~お》の心霊知識